一つの戦が終わり、また一つ戦が始まる。 事態は視聴者の誰もが予想した、けれども最悪の方向へと向かう。 大国ヤマトによるトゥスクル侵攻。 ヤマト以上に思い入れのある国が戦場となる。 それだけで心を痛める視聴者は決して少なくないはずだ。 そして視聴者以上に気に病む者がハクパーティの中に一人……。 * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * という訳で、やって参りましたトゥスクル侵攻。 けれど原作初見プレイ時ほどの驚きはなかったですね。 話を知ってるというのも勿論ありますが、原作ではアニメと違って露骨に不安を煽るシーンはなく、またトゥスクル使節団来訪編 → 開戦 という話の流れだったで不意打ちに近かったというのもありますね。 アニメ版では侵攻の様子を映像として描くことはせず、市民であるハクの視点で戦況の変化を又聞きする形に留めている。 ハクの知らないことは視聴者に知らせない、あくまで海を越えた向こうでの出来事として描かれた。 この演出方針によって、今回のエピソードはハクとクオン、オシュトルに注力された形になるね。 そしてこれは「偽りの仮面」という作品そのものの核とも合致する。 今回一言も台詞がないのにも拘わらず発揮される、圧倒的なヒロイン力よ。 - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - 戦争が起きているのにも拘わらず戦闘シーンを意図的に省いたことは、アニメ版ハクが過ごすヤマトの日常を描くことにも繋がった。 事実これがハクがいつものみんなと過ごす、最後の日常となる。 いつもと同じ日々とは少し違うものではあったが。 そもそもアニメ版のハクは戦闘描写を徹底的に省き、戦に怯える様を描いたことで、現代人らしさを強調した人物となっている。 オシュトルの隠密になってから荒事を幾つもこなし、軍師としてメキメキ頭角を現していった原作版とは別人のよう。 ゲーム版の方が適応力が高い、言い換えればアニメ版のハクは不器用な小市民。 - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - 個人的にはルルティエの料理シーンが描かれたことに歓喜した。 結局アニメ版では殆ど描かれず、貴重なカットとなってしまったな。 大人しくて家庭的なところこそ彼女の一番の魅力。 腐安定な姫様要素なんて数回ちょろっとやるだけでよかったのよ。 印象弱くてもいいじゃない、それが彼女なんだもの。 ところでエプロンとミトンは帝の現代知識から得られた裁縫なんだろうか。 和風な世界観から見ると浮いてるから亜人たちが自力で考案したものではなさそうにみえる。 * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * 兎にも角にもトゥスクルへの侵攻が始まってしまった訳ですが。 どう見ても無能の極みなデコポンポが派遣されるのは違和感ありますな。 アニメオンリー組の人は「どうせ足引っ張るだけだから他のにしとけよ」と内心ツッコミを入れているはず。 うん、俺もそう思う。 その辺りの遠征軍の編成が決定される経緯については原作が詳しい。 気になる人はゲームを買ってプレイしよう(ステマ)。 - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - 唐突にHoI脳が覚醒したので今回のトゥスクル戦について自分なりの分析をしてみようと思う。 まずは侵攻する側であるヤマト視点から。 島国であるトゥスクルへは海を越えての侵攻となる関係上、物資の補給は必然的に船舶を用いることになる。 すると物資を輸送するための船と、それを護衛するための船が必要となり、負担は二重にのしかかる。 制海権に関しては海戦に秀でたソヤンケクルがいる以上恐らく問題はあるまい。 侵攻の拠点となる海岸に物資を荷揚げするまでは、滞りなく行えるはずだ。 そもそもトゥスクルにまともな海軍力があるかどうか怪しいし。 それでも船の積載量という物理的なキャパシティだけはどうにもならない。 つまりヤマトがもつ船舶で恒常的に補給を継続できる物資の量が、そのまま投入できる軍の規模に直結する。 ヤマト全軍で一斉にかかり数の差で平押し勝利余裕でした、とはいかない訳だ。 ※原作によると千島列島は季節によっては陸路でいけるらしい。但し今回は時期が悪く無理。 さて陸揚げ自体は滞りなくできた。 だが上陸拠点を奪還されては意味がないので、拠点を防衛するための戦力と、彼らの継戦能力を維持し続けるための物資が必要になってくる。 物資を前線に運ぶ部隊が消費する物資も。 前線まで物資を送るのに時間がかかればかかるほど、距離が伸びれば伸びるほど、届く物資の総量は減る。 つまり陸揚げした物資を100%前線に送ることは不可能。 そしてそこは敵地だ。 地理・地形は明るくないし、全てが不慣れな土地。 補給路の寸断で疲弊し、戦わずして無力化されるというのは当然の結末か。 - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - 翻って、トゥスクル側からすればどうか。 結論から言えば、こっちから攻め込まず上陸してきた前衛を抑えながら補給路を寸断すれば相手は勝手に干上がる。 大前提として、トゥスクルにはソヤンケクルと正面切って戦う海軍力がないとする。 この場合、仮面よりもソヤンケクルの方が一番厄介な相手となる。 海を越えての反攻作戦を行うには少なくともソヤンケクル艦隊を撃破しないと話にならない。 また、こいつがいるせいで補給中の船舶を襲撃して物資を船ごと海に沈める戦法が使えない。 故に、ヤマト軍を上陸させてから叩かざるを得ない。 両国の位置関係を考慮するならば、現代における北海道が主戦場となるだろう。 トゥスクルからすれば、そこは戦場となるのは勝手知ったる自国の土地。 相手は必ず荷の陸揚げに向いた海岸を拠点としている。 侵攻する際は森林地帯を通り、前線に向けて絶えず物資を輸送し続けてなければならないことから、敵が陣を構える場所の候補も戦う前から絞れているといっていい。 仮に複数個の拠点を築きリスクを分散しようとしたとしても地形についての事前知識があるなら目星はつくし、拠点を築く最中の無防備なところを狙って攻める手も使える。 前作ではドリグラが夜中に山越えして関の向こうにある集落と連絡を取り、同時多角的に攻めるというエピソードがあった。 国土の大半を山野に囲まれたトゥスクルではクリリャライが主力であり、山や森を徒歩で突破しての戦闘は十八番、というのも無視できない点だろう。 - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - 総じて、単純に国力で比べれば、ヤマトの方が圧倒している。 けれど軍の規模と補給線の長さなどから制限が加わり、十全な動きは取れない。 戦慣れしていて精強なトゥスクル軍、海を越えた遠征、地の利。 この度の戦は出費が嵩むばかりで旨みがない、というのが実情でしょうな。